こころは自動的に、いやおうなく、満たされていないニーズのほうを向いてしまう。
序章
人の実に興味深い心理がある本に載っていました。人の意識は自然と「欠乏」しているものへ向かうということらしいです。
例えばダイエットに励んでいる人は、食べ物を見つけると目が向かってしまう、カロリー表示に目が向かってしまう。という具合です。
管理人は、外出中に「バイク」に自然と目が向きます。二輪(バイクを運転する)免許を持ちつつも、myバイクは持っておりません。バイクを見かけるたび、走行音を見かけるたびに自分のが欲しいなー、と思ってしまいます。これも”欠乏”なんでしょうね。
では、その”欠乏”が、ヒトにどんな影響をもたらすのでしょうか。
欠乏は人の心を独占する
欠乏=人が今の自分に足りていないと感じている、実際に実害が出ているもののことです。代表的な例はお金・時間・欲求でしょうか。さらに、それらは人の関心を独占して、知らず知らずのうちに生活に影響を与えています。
本書内の実験では、空腹な人とそうでない人で一瞬だけ見える単語をあてるゲームを実施しました。空腹な人はそうでない人に比べて、「CAKE」という食べ物の単語を見当てる確率が高かったとのこと。無意識に欠乏している欲求が影響しているのでは、と感じさせる結果ですね。
管理人は過去の出来事で、ドライブしているときに、ガス欠になりそうな状況になってから、必死に営業中のガソリンスタンドを探していました。振り返ってみると、ドライブや景色を楽しむ余裕はどこにもなかったです。
欠乏は「トンネリング」を引き起こす
トンネリングとは、ある一つのことに集中しすぎて、ほかのことが目に入らないこと。 トンネルの内側(関心のあること)がよく目に入り、逆にトンネルの外側(それ以外)のことは一切目に入らないことため、トンネリングと本書では例えています。
例えですが、あなたは、毎日ランニング・週2日はジムでトレーニングする習慣がある人だとします。ですが今、あなたは締め切り直前のやるべき仕事に追われています。とても今はトレーニングのことを考える暇がありません。これは、仕事に対してトンネリングしている時の例え話です。
もちろん、仕事の締め切りは守らなくてはいけないものです。短期的な目線ではやむを得ないことです。
しかし、上記の例を頻繁に繰り返していたとしたらどうでしょう?体への影響を長期的に考えてみると、良いこととは思えません。
目先のことに集中することは、仕事をする上で欠かせません。実際にラストスパートには集中力が上昇するということも多々あります。しかし、人生は長距離のマラソンです。しょっちゅう全力疾走をしていてはいつか足がもつれてしまうのではないでしょうか。
トンネリングは人に対して、短期的な視点を強くさせ、長期的な視点ではマイナスを引き起こします。
「トンネリング」は「ジャグリング」を引き起こす
人の豊かさは気にしないでいられるものの数に比例する
また新しい単語が出てきました。ジャグリングとは、目の前に起こった課題を曲芸のようにこなすこと。 ピエロが両手を使い、複数の玉を宙に浮かせ続けるアレのことです。
現実に置き換えると、目の前の問題に熱中し、それが解決した直後にまだ別の問題を解決しなければいけない状況です。一難去ってまた一難ということわざが、ピッタリと当てはまります。
たとえば
・借りたお金をさらに借りて返す、しかし金利(手数料)によって返済する額は増え、借金という問題を先送りするだけ。
・ 締め切り直前のプロジェクトを終わらせたが、結果、別なプロジェクトへ取り掛かるのが大幅に遅れて、再び余裕が全くない状況。
上記の状況で本来取り組むことは、根本的な原因(借金・遅れ)を直すことです。なぜそれが発生したかが分からなければまた同じ状況になってしまいまますよね。目の前の欠乏に支配されると、考える余裕がなくなってしまいます。
スラック(余裕)を獲得せよ
スラックはたんなる非効率でなく、心のぜいたくでもある。
散々、欠乏は何を引き起こすか、、を話してきました。その対策がスラック(余裕)を持ちましょう、ということになります。スラックとは英語で、slack。ゆるみ・たるみのこと。旅行に行くときのスーツケースの隙間とイメージしてください。
お金にも時間にもスラックは重要だと感じています。ぎゅうぎゅう詰めの予定・入るお金に対して100%使う予定の予算では、いつかほころびがきます。
アメリカ・ミズーリ州の病院のエピソードを簡単に紹介します。その病院では、手術室の不足による職員の時間外労働・スケジュール変更に悩まされていました。要因として、救急患者が入ってくると手術室が埋まり、そのために予定していた手術が先送りになるということが起きていたそうです。
しかし病院はとある方法を実行して、その状況は劇的に改善します。
その対策は
・手術室を増やす
・時間外労働をもっと増やす
ではなく、手術室を1つ開けておく、というものでした。つまり病院は、手術室1つというスラックを獲得したわけです。これにより状況は改善され、1か月後には受けられる手術の数が5%も増えたそうです。
時間とお金は、計画性と適度な把握がないと知らないうちになくなるものだと考えています。計画にはスラックを持たせることを意識したいですね。